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実録 07

売れ筋ランキングから、
販売数は分かるのか

Amazonの売れ筋ランキング(BSR)を入れると1日の販売冊数を返す換算機が、 世界中で使われています。それが日本で当たるのかを、自分の本の実績と突き合わせました。

Kindle出版をしていると、必ず一度は思います。「あの本、実際どのくらい売れているんだろう」

それを知るための道具が、世界には存在します。Kindlepreneur の Book Sales Calculatorです。売れ筋ランキングを入れると、1日の販売冊数を返してくれます。10年以上前から公開されていて、英語圏の著者にはよく知られた道具です。

そしてこの換算機は、Amazon.co.jp を選べます。

ならば日本でも使えるはずです。本当にそうなのかを、確かめました。

やったこと

私は投資ジャンルの本を出していて、KDPの管理画面から実際の販売数と読まれたページ数を出せます。また、自分の本の売れ筋ランキングを毎日記録しています。

この2つを突き合わせれば、換算機が当たっているかどうかが分かります。

結果

ランキング換算機の推定実際の販売実際に読まれた量
10,001沈黙の投資家 BNF3冊/日0.21冊/日403ページ/日
14,087cis流 順張り投資の全解剖3冊/日0.32冊/日139ページ/日
24,873億り人が全員持っていた5つの法則2冊/日0.11冊/日153ページ/日
45,785株で勝つ人は、なぜ機関投資家を追うのか1冊/日0.11冊/日127ページ/日
94,313BNFに学ぶ 自分で勝ち方を見つける力0冊/日0.07冊/日23ページ/日
148,725株が買われる理由、売られる理由0冊/日0.14冊/日45ページ/日
305,543メンタルは才能ではなく技術だ0冊/日0.04冊/日6ページ/日

ランキングは2026/08/26・08/28の平均、実績は2026/08/01〜28のKDPレポートの日平均。

9.3倍 〜 18.7倍

推定が0でなかった上の4冊について、換算機は実際の販売数を9〜19倍に多く見積もっていました。 「3冊売れている」と出た本が、実際には5日に1冊しか売れていません。

もうひとつの問題 ―― 8万位で崖がある

下の3冊を見てください。すべて「0冊/日」と出ています。

どこから0になるのかを調べました。

8万位1冊/日 と表示される
8万3千位0冊/日 と表示される

2026年8月28日時点。Amazon.co.jp・Kindle本での確認値です。基準は更新されるので変わる可能性があります。

およそ8万位を境に、あとは何位でも「0冊」です。10万位でも、30万位でも、100万位でも同じ表示になります。

しかし実際には、30万位の本にも読者はいました。販売は25日に1冊ほど、読み放題では毎日6ページ読まれています。ゼロではありません。

ここがいちばん困る点です。
私が毎日記録している自分の12冊のうち、8冊が8万位より下にいます。個人が出した本の多くは、この帯にいるはずです。 つまりいちばんこの道具を必要としている人に、何も返していないことになります。

ただし「日本の個人出版本の大半が8万位より下」というのは、私の12冊から言えることではありません。そこは推測です。

なぜ、こうなるのか

先に書いておきます。これは「あの換算機が間違っている」という話ではありません。

理由は、日本と英語圏の市場構造の違いにあります。

売れ筋ランキングは「販売+読み放題」の合計を映している

Amazonの売れ筋ランキングは、購入だけで決まっているわけではありません。Kindle Unlimitedで借りられた分も反映されます。

いっぽう、あの換算機が返すのは販売冊数だけです。

ここに、ずれの原因があります。KDPセレクトに入れた本は、順位の大部分が「読み放題で借りられたこと」で作られています。その順位を「全部が販売だった」として換算すれば、当然、販売数を多く見積もることになります。

実際、上の表を見ると読まれたページ数のほうが圧倒的に大きいのが分かります。いちばん上の本は1日に403ページ読まれていて、販売は0.21冊です。この本の読者のほとんどは、買っていません。借りています。

英語圏では、この差が小さい

英語圏には、読み放題に入れず販売だけで戦う本が数多くあります。伝統的な出版社の本も含めれば、なおさらです。その市場で作った換算式なら、販売数を返すことに無理がありません。

日本の、しかも個人が出した本は、ほとんどがKDPセレクトに入っています。構造が違うのです。

この検証の限界

都合の悪いことも書きます。この検証には、はっきりした限界があります。

ですから、ここで言えるのは「読み放題に入れた日本の個人出版本では、あの換算機は合わない」までです。それ以上のことは、このデータでは言えません。

では、どうするか

私は自分でやり直すことにしました。毎日12冊のランキングを記録し、KDPの実績と突き合わせています。

そこで分かったことが2つあります。

1. ランキングは「販売」ではなく「読まれ方」とよく対応する

ランキングと販売数の相関は −0.70 でした。いっぽう、ランキングと読まれたページ数の相関は −0.94。はるかに強い対応です。

つまり日本の個人出版本では、ランキングは「何冊売れたか」より「どれだけ読まれたか」を映しています。だから、そちらを推定するほうが理にかなっています。

2. 絶対値は当てられない。でも順位の比較はできる

自分で作った推定式でも、実測との誤差は中央値42%ありました。「月◯円になります」と言えるような精度ではありません。

ただし同じ検証で、本どうしの順位の並びはほぼ完全に安定していました(順位相関 0.972)。

だから作る道具を変えました。
「この本は1日◯冊売れます」ではなく、「AとB、どちらの市場が有望か」を比べる道具です。 それがジャンル比較です。推定式の中身も、誤差の大きさも、 そのページに全部書いてあります。

まとめ

記録は続けています。データが増えたら式を更新し、この記事も書き直します。そのとき、外れ幅も一緒に公開します。