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実録 03

¥1,250に張り付けていた
価格設定は、間違いだった

26冊のほぼ全部を¥1,250にしていました。
自分のロイヤリティレポートを1行ずつ検算したら、前提が2つとも崩れました。

先に結論

思っていたこと
¥875
¥1,250 × 70%
だと思っていた1冊の手取り
実際のレポート
¥795
日本は税込で価格を入力し、
印税は税抜から計算されるため
思っていたこと
上限は¥1,250
これを超えると
35%に落ちると思っていた
実際のレポート
¥1,500でも70%
2026年7月7日に
価格帯が引き上げられていた

つまり私は、収入を1割多く見積もりながら、上限に達していない価格で売り続けていたことになります。順に説明します。

間違い1 ―― 手取りは「価格 × 70%」ではない

KDPの印税は70%か35%を選びます。70%を選んでいるので、¥1,250の本なら¥875が入る。そう計算していました。実際のレポートを開いたら¥795でした。80円足りません。

原因は消費税です。日本のKDPでは消費税を含んだ金額を価格として入力します。ところが印税は税抜に直してから計算されます。

手順計算金額
管理画面に入力した価格(税込)¥1,250
税抜に換算1,250 ÷ 1.1¥1,136
配信コストを引く1,136 − 1(ファイル1MB)¥1,135
印税70%1,135 × 0.7¥795

思い込みではないことを確かめるため、レポートに出てくる価格帯を全部この式に通しました。

税込価格税抜この式で計算レポートの実績判定
¥1,500¥1,364¥955¥955一致
¥1,250¥1,136¥795¥795一致
¥1,200¥1,091¥761¥761一致
¥1,000¥909¥636¥636一致
¥600¥545¥381¥381一致
5つの価格帯すべてが、1円まで一致しました。 正しい式は (税込価格 ÷ 1.1 − 配信コスト) × 70% です。 「価格 × 0.7」で収入を見積もっている人は、実際より約1割多く見積もっています

月10万円のつもりが9万円だった、という規模の差です。事業計画を立てているなら、ここは直したほうがいいです。

間違い2 ―― 「¥1,250が上限」は、もう古い

こちらのほうが金額の影響は大きいです。

日本のKDPで70%の印税を受け取れるのは¥250〜¥1,250、というのが長く常識でした。解説記事のほとんどがそう書いていますし、私もそれを信じて、ほぼ全部の本を¥1,250に設定していました。「70%が取れるギリギリの上限」だと思っていたからです。

ところが自分のレポートには、こういう行がありました。

税込価格印税の種類1冊の手取り
季刊のムック本¥1,50070%¥955
英語版(日本ストアでの価格)¥1,65070%

¥1,250を超えているのに、70%で計上されています。しかも実際に¥955が支払われている。

調べたところ、2026年7月7日にKDPが70%ロイヤリティの価格帯を引き上げていました。米国では$9.99から$12.99へ拡大し、他の国も同等の変更とされています。日本もこの対象です。

つまり、¥1,250に張り付けている本は、上限に達していません。 古い上限を書いた記事はまだ大量に残っていて、検索するとそちらが上位に出てきます。 いま自分の本にどこまで70%が付くかは、KDPの価格設定画面で実際に金額を入れて確かめるのが確実です

いくら損していたのか

2026年8月1〜17日の実績で計算します。この期間、電子書籍の有料販売は31冊、うち¥1,250の本が19冊でした。月ペースに直すと¥1,250帯が約35冊です。

条件1冊月35冊なら年間
税込 ¥1,250(現状)¥795¥27,825¥333,900
税込 ¥1,500¥955¥33,425¥401,100
+¥160+¥5,600+¥67,200

年間で約6万7千円です。ただしこれは販売冊数がまったく変わらなかった場合の数字なので、そのまま鵜呑みにはできません。

では、上げるべきなのか

値上げすれば冊数は落ちます。落ちるかどうかではなく、どれだけ落ちたら損になるかを先に計算しておきます。

損益分岐は「冊数が17%落ちるまで」です。
¥795 ÷ ¥955 = 0.83。つまり冊数が現在の83%を保てれば、値上げしたほうが得になります。 月35冊なら、30冊まで落ちてもトントンです。

17%という数字をどう見るかは、本の性質によります。指名で買われる本なら、この程度の値上げで2割近く落ちることは考えにくい。逆に、価格で比較されて選ばれている本なら落ちます。

私が実際に取る手順はこうです。

  1. 全冊いっぺんに上げない。売れている本を1〜2冊だけ¥1,500にする
  2. 2週間、冊数を毎日記録する。値上げ前の同じ日数と比べる
  3. 冊数が83%を保てていれば、他の本にも広げる。割り込んだら戻す
  4. 読み放題の既読ページ数も同時に見る。値上げで購入が減っても、読み放題で読まれる量が増えていれば全体では悪化していない可能性がある

いきなり全部を上げると、落ちたときに原因が分からなくなります。

なぜ、これに気づけなかったのか

理由は単純で、一度調べて納得したことを、二度と調べ直さなかったからです。

「70%は¥1,250まで」は、KDPを始めたときに調べて、正しい情報でした。だから前提として固定し、以降は価格を決めるときに毎回この数字を思い出すだけになりました。前提そのものが古くなる可能性を、考えていませんでした。

手取りの計算についても同じです。「70%だから0.7を掛ける」で計算が通ってしまうので、レポートの実額と突き合わせる動機がありませんでした。合っているかどうかを確かめずに、何十回も使っていたことになります。

教訓として残しておきます。 料率・価格帯・手数料のような「決まりごと」は、年に一度は実データと突き合わせる。 特にレポートに実額が出るものは、自分の計算と合うかを一度だけでも検算する。 合わなければ、そこに知らない仕組みがあります。

いま確認すべきこと(3分)

  1. KDPのレポートを開き、自分の本1冊の「1冊あたりのロイヤリティ」を見る
  2. その本の税込価格 ÷ 1.1 × 0.7 を計算し、上の数字と合うか確かめる
  3. KDPの価格設定画面で、いまより高い価格を入れてみて、70%のまま維持されるかを見る

3つ目が特に重要です。記事を読むのではなく、自分の管理画面で確かめてください。私がこの記事に書いていることも、いつか古くなります。

計算そのものは、このサイトのKDP印税シミュレーターで確認できます。上の式をそのまま実装していて、レポートの実額と一致することを確かめてあります。

まとめ