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実録 01

★1が付いた本を、
どう立て直したか

レビューは星だけで、文章はありませんでした。何が悪かったのか、誰も教えてくれません。
自分で診断して、章をひとつ足すまでの記録です。

刊行して間もない本に、★1が付きました。文章はなく、星だけです。その時点でレビューは3件しかなく、平均は3.4まで落ちました。

まず、算数の話をします

評価件数が少ないうちの低評価は、中身とは無関係に効きます。

状態計算表示される平均
★5が2件(5+5) ÷ 25.0
そこに★1が1件加わる(5+5+1) ÷ 33.7

1件で1.3ポイント動きます。これは文章の良し悪しではなく、ただの割り算です。逆に言えば、レビューが50件ある本なら同じ★1は0.08しか動かしません

ここから導かれる対策は2つです。①原因を直す ②件数を増やして母数を厚くする。 多くの人は①だけを考えますが、実際に効くのは②のほうが早い。両方やります。

理由が書かれていないとき、何を疑うか

星だけのレビューには理由がありません。だから推測するしかないのですが、当てずっぽうで直すと、たいてい関係のないところを直して終わります。私が使っている問いはひとつです。

「この本を読み終えた人は、明日、何ができるようになったか」

これに一言で答えられなければ、内容の質とは無関係に読者は不満を持ちます。実際に自分の本で試したところ、答えられませんでした。

診断の結果 ―― 「証明」で終わっていた

その本は、ある投資家の手法を分解して、なぜそれが普通の人には再現できないのかを検証した本でした。取材と検証は徹底していたと思います。読み物としても悪くない。

しかし構造を見直すと、こうなっていました。

つまり本全体が「渡らない」ことの証明で終わっていたのです。読者は「すごい話だった」とは思っても、手ぶらで本を閉じることになります。持ち帰れるものが、終章の抽象的な5箇条しかない。

これは、書いた本人には見えません。書き手は取材と検証に何ヶ月もかけているので、その過程そのものが価値に見えるからです。読者はそこにいません。読者がいるのは、最後のページだけです。

いちばん大事な発見

渡せる材料は、すでに本文の中に全部ありました。 道具の形になっていなかっただけです。

これは重要なので繰り返します。書き直しは必要ありませんでした。本文のあちこちに散らばっていた具体的な判断基準を集めて、読者が使える形に組み直すだけでよかったのです。

実際に本文を洗い出すと、こういうものが埋まっていました。

どれも本文中には書いてありました。しかし「解説」として書かれていたので、読者は自分の作業に変換できなかった。

やったこと

1. 章をひとつ新設した

「真似ていい部分 ―― 道具の形にする」という章を最後に足しました。約9,700字、表3点。上に挙げた材料を六つの道具として並べ直し、章末に実行シートを1枚付けました。

ポイントは、新しいことを何も書いていないことです。本文にあった記述を、命令形の手順に変換しただけです。

2. 終章の重複を削った

新しい章と内容がかぶる3つの節を、終章から削除しました。足すときは削るのとセットです。足すだけだと本が冗長になり、別の不満を生みます。

3. 前後を整合させた

「はじめに」と「おわりに」を新しい章に対応させ、持ち帰りの数を五つから六つに直し、図番号を振り直しました。ここを忘れると、増補したことが本の中で矛盾として見えます。

4. 紙版も同時に作り直した

本文が増えたのでページ数が変わります。124ページから139ページになり、背幅も6.98mmから7.95mmに変わりました。背幅が変わるということは、表紙PDFも作り直しになります。本文だけ差し替えて表紙を使い回すと、審査で止まります。

紙の本を出している場合、タイトルとサブタイトルは変更できない前提で改訂を設計してください。 本文・表紙・価格・説明文の差し替えだけなら、そのまま更新できます。 詳しくは背幅・表紙サイズ計算機のページに書いています。

5. 評価の母数を増やしにいった

冒頭の算数のとおり、3件しかない状態では何を直しても平均は戻りません。無料キャンペーンを使って読者を増やし、レビュー件数そのものを厚くする。これが実質的にいちばん速い立て直しです。

この経験から、他の本にも入れたもの

同じ問題は他の本にもありました。診断の問い――「読み終えた人は明日何ができるか」――に答えられない本が、ほかにもあったのです。そこで新刊には最初から入れる要素を決めました。

入れるもの役割
実行シート/チェックリスト読者が本を閉じたあとに手元に残る紙
数値の入った基準「慎重に」ではなく「何%で」と書く
やってはいけないことの明示禁止事項は、推奨事項より行動を変える
通しの手順資金いくらから始めて、何を、どの順で

まとめ

低評価が付くと、書いたもの全部が否定されたように感じます。実際には、渡し方がひとつ足りなかっただけ、ということがかなり多いです。