実録 01
レビューは星だけで、文章はありませんでした。何が悪かったのか、誰も教えてくれません。
自分で診断して、章をひとつ足すまでの記録です。
刊行して間もない本に、★1が付きました。文章はなく、星だけです。その時点でレビューは3件しかなく、平均は3.4まで落ちました。
評価件数が少ないうちの低評価は、中身とは無関係に効きます。
| 状態 | 計算 | 表示される平均 |
|---|---|---|
| ★5が2件 | (5+5) ÷ 2 | 5.0 |
| そこに★1が1件加わる | (5+5+1) ÷ 3 | 3.7 |
1件で1.3ポイント動きます。これは文章の良し悪しではなく、ただの割り算です。逆に言えば、レビューが50件ある本なら同じ★1は0.08しか動かしません。
星だけのレビューには理由がありません。だから推測するしかないのですが、当てずっぽうで直すと、たいてい関係のないところを直して終わります。私が使っている問いはひとつです。
これに一言で答えられなければ、内容の質とは無関係に読者は不満を持ちます。実際に自分の本で試したところ、答えられませんでした。
その本は、ある投資家の手法を分解して、なぜそれが普通の人には再現できないのかを検証した本でした。取材と検証は徹底していたと思います。読み物としても悪くない。
しかし構造を見直すと、こうなっていました。
つまり本全体が「渡らない」ことの証明で終わっていたのです。読者は「すごい話だった」とは思っても、手ぶらで本を閉じることになります。持ち帰れるものが、終章の抽象的な5箇条しかない。
これは、書いた本人には見えません。書き手は取材と検証に何ヶ月もかけているので、その過程そのものが価値に見えるからです。読者はそこにいません。読者がいるのは、最後のページだけです。
これは重要なので繰り返します。書き直しは必要ありませんでした。本文のあちこちに散らばっていた具体的な判断基準を集めて、読者が使える形に組み直すだけでよかったのです。
実際に本文を洗い出すと、こういうものが埋まっていました。
どれも本文中には書いてありました。しかし「解説」として書かれていたので、読者は自分の作業に変換できなかった。
「真似ていい部分 ―― 道具の形にする」という章を最後に足しました。約9,700字、表3点。上に挙げた材料を六つの道具として並べ直し、章末に実行シートを1枚付けました。
ポイントは、新しいことを何も書いていないことです。本文にあった記述を、命令形の手順に変換しただけです。
新しい章と内容がかぶる3つの節を、終章から削除しました。足すときは削るのとセットです。足すだけだと本が冗長になり、別の不満を生みます。
「はじめに」と「おわりに」を新しい章に対応させ、持ち帰りの数を五つから六つに直し、図番号を振り直しました。ここを忘れると、増補したことが本の中で矛盾として見えます。
本文が増えたのでページ数が変わります。124ページから139ページになり、背幅も6.98mmから7.95mmに変わりました。背幅が変わるということは、表紙PDFも作り直しになります。本文だけ差し替えて表紙を使い回すと、審査で止まります。
冒頭の算数のとおり、3件しかない状態では何を直しても平均は戻りません。無料キャンペーンを使って読者を増やし、レビュー件数そのものを厚くする。これが実質的にいちばん速い立て直しです。
同じ問題は他の本にもありました。診断の問い――「読み終えた人は明日何ができるか」――に答えられない本が、ほかにもあったのです。そこで新刊には最初から入れる要素を決めました。
| 入れるもの | 役割 |
|---|---|
| 実行シート/チェックリスト | 読者が本を閉じたあとに手元に残る紙 |
| 数値の入った基準 | 「慎重に」ではなく「何%で」と書く |
| やってはいけないことの明示 | 禁止事項は、推奨事項より行動を変える |
| 通しの手順 | 資金いくらから始めて、何を、どの順で |
低評価が付くと、書いたもの全部が否定されたように感じます。実際には、渡し方がひとつ足りなかっただけ、ということがかなり多いです。